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デジタルネイチャー開発研究センターについて

要旨

今や身体性の領域までデジタルは行き渡り,ユビキタス【コンピューティング】という名前で呼ぶよりも,【新しい自然(デジタルネイチャー)】が構築されつつある,という状態として考えられるべきではないだろうか.

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計算機科学の発展の恩恵によって計算機内でのコンピュータシミュレーション(仮想世界での検証・演算)(in silico / ex situ)と計算機外でのナチュラルコンピュテーション(実世界での実証・計算)(in situ / in vivo )が接続され,相互作用が生まれた結果生じる新しい自然観・自然そのものは「デジタルネイチャー(in silico-natura)」と呼ぶべき状態になりつつある.

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たとえば,音や光などの波動現象を計算機で制御する技術により,実物と見紛う映像(蝶など)を空中に浮遊させ,本物と区別がつかない物体(素材サンプルなど)をプリンターから出力することができるようになった.

デジタルネイチャーは、3Dプリンターなどを用いたデジタルファブリケーション手法やAR/VR,遺伝子プログラミング,ロボティクスなど・さまざまな手法により生成される.この人工生成物は、自然環境との相互作用を経て再びデータ化され,再度自然に還流するフィードバックループによって進化する.

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自然はこういった知能と環境のループによる視聴覚の認知の発達(神経系:ミドルウェアソフトウェア),器官の構造(物理系:ハードウェアミドルウェア)の進化に至るまでの多様な最適化をおこなってきた.

私達は,物理世界とデータ世界の循環による新しい自然への思想的・技術的・デザイン的な探求は,持続可能性を必然的に意識しなくてはならない現代において重要な意味を持つと信じている.デジタルネイチャーの到来を見据え、価値創造と次世代の人材育成に力を入れるべきと考えている.

筑波大学には情報工学分野のみならず、文化・芸術・スポーツ分野の研究者が多く所属しており,デジタルネイチャーに纏わる研究開発を進めるには大きなポテンシャルがあると実感する.そこで,人に纏わる情報工学研究を軸としながら,計算機と自然の新しい関係性について,文化・芸術・スポーツ分野に展開し推進すべく、2020年に「デジタルネイチャー開発研究センター」を立ち上げた.

センターでは主に、研究開発や人材の育成、社会実装に向けた取り組みを行っています。またESG課題などに情報技術とその周辺領域の専門性を生かすべく、積極的に企業との共同研究や公的プロジェクトに参加しています。

トップメッセージ

こんにちは,落合陽一です.
筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターでセンター長を務めさせていただいております.

「デジタルによって変化し続ける新しい自然と我々の関係はどのようなものだろうか」というのが,ぼくの長い間の問いです.つまり新しい自然と元来の自然の間の関係性,ヒューマンインターフェースはどう変わりゆくか.アートや表現はどうやって変遷していくのだろうということを,ずっと考えています.

スマートフォン普及以後の世界であっても,姿形を変え続ける計算機の姿と比べれば人間の性質はほとんど変化していないように見えます.例えば,古典の日記文学と現代のYouTuberってどう違うんだろうとか,歌会と初音ミクの違いは? とか.仏教の話でよくありますよね.砂が落ちていく,その砂の1粒1粒の間に世界があると.今,我々は砂サイズのコンデンサーを使ってスマホとか組み立てているわけです.砂サイズの部品が世の中に溢れてくると,やがて1粒の砂の中には人工の情報処理装置はあるし,液体の数滴の中にもプログラミングされた遺伝子のようなものが入っていて情報が含まれていく.そういう目でぼくは変わりゆく自然の風景を見ています.

デジタルによって変化し続ける新しい自然と我々の関係に対して更に研究を進めるべく,デジタルネイチャー開発研究センターを発足しました.計算機と自然の間の隔たりない関係性の先に生まれる相互変換を探求し,そのための研究やプロトタイプ作りを日々行っています.

計算機によってもたらされる新しい自然を人と調和する豊かなもの,そして持続可能なものにしていくため,研究やプロトタイプ作りを通じて社会還元し,その営みの中で人材を育てていくため我々は邁進していきます.

デジタルネイチャー開発研究センター落 合 陽 一

施設見学

所在地

〒305-8550 茨城県つくば市春日1-2

センターへの見学および訪問の際は事前にアポイントメントをお取りください.

急にお越しいただいても対応いたしかねます.

施設フォトギャラリー

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